(「舌小帯」という漢字を見る)・・・先生、これなんて読むんですか??

これは「ぜつしょうたい」と読みます。

絶唱隊?!フレディ・マーキュリー?トータス松本? 西城秀樹の傷だらけのローラ??

いや、僕的にはサンボマスターですね・・・「あきらめないで〜どんな時も〜」って、違いますわ~。 「ぜつ」は「舌」、「しょうたい(小帯)」は「筋」のことで、舌の下についている筋の事です。

(口を開けてベロの下にあるものを触ってみる)ああ、このピロピロしたやつですね。

はい。舌小帯が付いている位置によって、舌の動きを制限してしまうことがあるんです。
「舌小帯短縮症」だと滑舌、英語の発音「R」「L」に関係してくると言われています。
子供をインターナショナルに育てたい親御さんは、気になっちゃいますよね。今や小学校で英語の授業ありますからね。

「舌小帯」がよろしくないと気づくのは、どんな症状がある時ですか?

滑舌が悪い、話しにくい、食べこぼしなどですね。

診療しているときにコチラが気付くこともあるので、オアシス歯科に来ているキッズはご心配なく!

初診時に「あっかんべー」してもらい、舌の動きを見ているので、ご安心下さい。

先生にアッカンベーですか・・・なかなかできないですよね。(笑)
歯以外の舌まで診てもらえるなんて、なんかおトクな気がします。(笑)

はい。浦和のキッズのお口を守るというのは、歯だけじゃなくて舌も含めて、です。
当院で対応できない場合はどこに紹介すればいいか?も分かります。

安心してください履いてますよ、いや、診ていますから。(笑)

(笑)

舌小帯(ぜつしょうたい)とは?

舌の裏側のど真ん中にあるスジ状のもの。

新生児の時は厚く短く舌の先端近くまで付いているが、子供の成長と共に舌が大きくなることで徐々に引き延ばされて、舌の先端から中間に移動していきます。

舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)とは?

舌小帯が舌先端に近い位置に付着しているため、舌の動きが制限を受け、様々な機能障害を呈する状態を言います。

1歳半検診、3歳児検診、就学前検診、学校歯科検診などで指摘を受けることがあります。
舌小帯強直症(ぜつしょうたいきょうちょくしょう)、舌小帯癒着症(ぜつしょうたいゆちゃくしょう)、舌癒着症(ぜつしょうたいしょう)など色々な言い方があります。

つまり「ベロの下の筋が短いことで歯並びや発音、ご飯を食べるのが遅いなどの影響がでる」ということです。

現在(2024/6)の舌小帯短縮症の考え方

色々調べてみると「小児科」と「歯科」で見解が異なっているような点が散見されました。専門家ではない親御さんとしては、どちらが正しいのか判断が難しくなっているのが現状のようです。

そこで下記に「歯科での見解」をまとめてみました。

その1【東京医科歯科大学小児歯科での考え方】

https://www.tmd.ac.jp/dohs/155_58bd7160b4bb5/155_58c15065714ef

  • 新生児期、乳児期前期

哺乳障害との関連性は示す根拠に乏しく、主たる原因とは考えられていない。そのため、手術を行う必要は無い。

  • 幼児期全般

タ行(タ、テ、ト、ダ、デ、ド)、ナ行、ラ行の発音が曖昧になる。言語治療により回復するという報告が多数あり、2〜4歳での手術の必要は無い。

舌の運動制限により摂食機能障害が生じる可能性があり、食べ物をこぼす問題がある。

歯列発育へ影響するという科学的根拠は提示されていない。

以上をまとめると、

・2〜3歳での手術の必要性は低い。

・4〜5歳で食べ物をこぼすような摂食機能障害がある場合、手術を検討する。

・機能障害(構音障害、摂食機能障害)がいじめや劣等感につながる場合、手術を検討する。

その2【日本小児歯科学会 舌小帯切除に関する見解 ポジションステートメント】

https://www.jspd.or.jp/recommendation/article25

以下に原文をそのまま記載します。

  1. 明らかな哺乳障害がない場合は、舌小帯を切除する必要はありません。
    授乳障害がある場合でも、その原因の多くは授乳時のポジションなどの舌小帯以外の場合が多いため、授乳に関する関連職種と連携をとり、その上で舌小帯に原因があると判断された場合にのみ、十分なインフォームド・コンセントを行った上で舌小帯切除を行います3,4)
  2. 舌小帯短縮症による構音障害は、5歳以降に切除術の必要性を判断します。
    舌小帯に起因すると思われる発音の障害に関しては、構音機能の発達完了期の5歳以降に判定し、その結果から舌小帯切除術の要否を判断しても機能は十分回復するとされており、構音障害のために早期(2~4歳)に舌小帯切除をする必要性はありません5,6)
  3. 舌小帯切除術は保険適応です。
    舌小帯短縮症における舌小帯切除術は保険診療で施術できるものであり、高額な自費診療により行うものではありません。

先生、「構音障害」ってなんですか??

声帯で作った音を変換することを構音(こうおん)と言います。
我々は思い通りの音を作るのに、唇、頬、舌、歯などを使っています。
その構音のプロセスの中で、なんらかの障害があってうまく音を作れないことを「構音障害」と言います。
例えば、舌の動きが悪い、前歯が無い、唇の動きが悪いなどです。

先生、「摂食機能障害」ってなんですか??

食べ物を噛んで飲み込む一連の動作に障害が生じていることを「摂食機能障害(せっしょくきのうしょうがい)」と言います。

さっきと似ていますが、舌の動きが悪い、歯が無い、飲み込むまでの連動が上手くいっていないなどです。

舌小帯短縮症の場合、舌の動きが悪いため、食べ物を喉の方へ送り込むことが上手くいかず、食べこぼしたり、咀嚼(そしゃく:モグモグゴックン)時間が長くなったりすることがあります。

で、以下に当院での治療方針をまとめますね。

オアシス歯科での治療方法は?

舌の運動障害があったとしても、口の中の他の部位(唇・頬など)で補い合って発音・摂食機能に影響が生じないこともあります。
したがって、以下の方法について説明し、よく相談して治療に当たります。

  • 運動療法(舌の動きの訓練)
  • 外科療法(舌小帯伸展術:ぜつしょうたいしんてんじゅつ)

手術になった場合には、経験豊富な口腔外科医が担当します。
その後の「舌の運動療法」まで含めて、対応します。

実際の症例写真

1.年齢:7歳
 
2.主訴:話し方が赤ちゃんっぽい(舌ったらず)、食べるが遅い

3.診断:舌小帯強直症(ぜつしょうたいきょうちょくしょう)

4.期間:R6.3.18 話し方が赤ちゃんっぽいと相談がある

3.27 手術説明と相談

4.15 舌小帯伸展術(ぜつしょうたいしんてんじゅつ)

4.22 抜糸、舌の運動開始

5.22 舌の運動の経過観察(術後1ヶ月)、診察終了 

★訓練後の舌を出した写真です。

•舌を前に出す動き、上に挙げる動きが改善しています。

5.料金:こども医療のため0円

6.事前に知ってもらいたい事:

手術後、舌の運動&話す訓練を行う必要があり、すぐに話しやすくなるわけでは無い。

8.処置部位:舌小帯 

9.治療に用いた主な装置:特になし

実際の写真の例があると分かりやすいですね。ちなみに、どれくらい切るんですか?

舌小帯をピンっと伸ばした状態で、テンションが掛かっていて、解剖学的に安全な部位に横に7〜8ミリ、そこから深い方向に舌小帯の伸び方を確認しながら安全な位置まで切開を進めていきます。

簡単に言うと、横に7~8ミリです。

手術の痛みは?

見た目は痛々しいのですが、麻酔をして痛み止めを飲めば大丈夫です。

手術後の痛みは?

局所麻酔をして行うので、手術中は痛くありません。
スムーズにいけば、10分くらいの手術です。
術後は、痛み止めでコントロール可能なレベルの痛みです。

舌小帯に問題があるとよく親御さんが気付いたなと思うのですが、初診でしたか?通っていた方でしたか?

初めは、むし歯予防でフッ素塗布を行なっていました。
何回か通っている中で、「子供の話し方が気になる」という相談を受けて、色々と相談した結果、手術することになりました。

「滑舌が悪い」などとイジられるのが小学校に入ってからなので、小学校に入る前くらいにやることが多いです。
言語の発達には影響していませんが、発音には影響するとされています。

予防歯科で通っている中で気づいたんですね。
お子さんにはどう説明するんですか?納得していましたか?

「舌がもう少し動くようになると、カッコよく話せるようになるよ」と。
親御さんには、詳しい術式を説明します。
お子さんには、怖がらないように配慮して説明するようにしています。

術式・・・またもやドクターXの大門未知子味のある単語です。(笑)
怖がるだろうから、子どもに配慮してもらえるのは助かります。

ちなみに、手術したその日はご飯食べられますか?

術後2〜3時間は舌の裏側に麻酔が効いた状態のため、食事は待ってもらいます。
水を飲むことは出来ます。
麻酔からさめたら、やわらかい食べ物から始めてもらっています。

ご飯が食べられないのかと思い心配しました。
手術して、実際に話しやすくなった??

これが一番重要なのですが、術後に「糸取り」が終わったら、舌を動かす練習と話をする練習を行います。

練習を行うことで、徐々にお子さんが舌の動かし方が上手になってきます。
親御さんが実感するには、少し時間がかかります。

「強直」って何ですか??

「強直」(きょうちょく)と読みます。
舌の動きが制限を受けているって感じですかね。
「舌小帯短縮症」っていうこともあります。

症例写真を見ると「手術前」は舌の先が割れているけど、「手術後」は割れてないように見えるのは気のせいですか?
もしかしてその「割れている舌」が、発見のポイントですか??

「ハート状舌」という特徴的なフォルムになります。
「キュンです」とは違いますよ、不謹慎でした、すみません。

舌小帯が舌の先の方までくっついていると、舌先の真ん中が突っ張ってしまい、舌を前に突き出した時にハート状に見えます。
おっしゃる通り、発見するポイントです。

ほっておくとどうなりますか?
そのまま大人になっている人もいるのでは、と思いますが。

そのまま大人になり、たまたま歯医者で指摘を受ける方もいます。
芸能人の方でも滑舌を良くするために手術を受けた、とYahooニュースになっていることがあります。

そもそも舌(した:ベロ)の相談を、歯医者さんでしてもいいんですか??
何科にかかっていいか、分からないです・・・。

舌は口腔外科の専門家が得意としている領域です。
もしくは、耳鼻科の先生ですかね。

領域って何ですか?
一般ピーポーが分かるように説明お願いします!

領域とは、解剖学的に診療の守備範囲としている組織のことです。
もっと分からなくなっちゃいましたね。(汗)

ちなみに「舌小帯」で検索すると、「舌小帯外来」「舌小帯短縮症」などが出てきます。
小児科、耳鼻科が上位にヒットしてくるので、歯科では珍しいのかもしれません。

そうなんですね。

でも口の中を診るチャンスは、歯医者さんがダントツかなあって思うんですよ。

耳鼻科はノドと鼻と耳だし、小児科は具合が悪くなってから行くのでベロまで気が回ってないタイミングですよね。

ワンストップで子供を診てくれるのは、子育てママにはありがたいです。

かゆいところ、いや、気づいていないところまで手が届くという「問題発見型」歯医者さん、ですね!

はい!浦和のキッズを守るため、五感を研ぎ澄ませて診療にあたっています!

ちょっとした不安な仕草も見逃しませんよ~。(笑)

出会った瞬間に診察は始まっています。
結構、すぐ問題点を分かっちゃうタイプの歯医者さんなんですよね。