ガンなどの持病のある方の歯の治療~有病者歯科外来

私のママ友で乳がんの手術をした人がいるんです。お医者さんに「手術の前に歯医者さんに行ってね」と言われたらしく。なんで手術前に歯医者?と思ったんですがどうなのでしょうか?

僕の患者さんにも、何人かいましたね。
全身麻酔の手術や、抗がん剤をこれから使う可能性がある場合、口の中をキレイにしておくと術後の合併症が少ないというのが分かってるんです。
だから、外科の先生でも「手術の前に歯医者に行ってください」と紹介状を書いてくださる先生はいい外科の先生です。
40代から腫瘍のある人もいますが、年配の方の割合が多いですね。
なおかつそこに絡まって、薬をたくさん飲んでいるので、薬を理解していないといけないですし。

内科の薬のことって、歯医者さんは分かるんですか?

そんなに恐れることはないんです。
歯科治療で気をつけないとならない薬は少ないんだけど、分からないから全てを怖がっている感じです。
患者さんが安心しているなと感じるのは、
歯医者:「がんのステージは、何と言われました?」
患者さん:「乳がんでステージは3と言われました」
歯医者:「治療は何をすると言われましたか?術後の薬はホルモン剤/抗がん剤ですか?」
患者さん:「手術をして、その後で薬を使うと言われました。」
歯医者:「となると、手術後1か月で抗がん剤始まるな」
と言ったように話がスムーズに進み、歯科治療の関わり方を説明します。

患者さんがお医者さんからどう言われているかを聞けば、大体分かりますね。
「だったら詰め物の取れたところは、3か月くらい蓋をしておける硬いセメントにしておいた方が良いな」など・・・
これが出来るのは、術前術後の状態を知っているからなんです。
術後は免疫力が落ちて口内炎も出来やすいので、そこも診ますしノウハウもあります。

術後の経過の予測して、逆算して治療をする・・・医科の知識もある歯医者さんだから出来るんですね。

これから手術の患者さんで、治療が必要な場合も、同じように予測して逆算して「じゃあここまでやりましょう」とお話しして治療をします。
1回目は心配そうな表情をなさっている患者さんも、2回目には安心したお顔になっていくんです。
そうすると、医科の先生と話をした内容・・・例えば「白血球が下がったと言われた」などの話も教えてくれます。

大学病院に長くいて、医科の先生との関わりも多かったからこそ判断が出来る事もあるので、その時は嬉しいですね、僕の知識が活かせたなって。
そこが僕のモチベーションになっていますね、その人の人生にどれだけ貢献できるか、まさに当院のパーパスです!(鼻息荒い)

お医者さんに手紙を書くお願いは出来ますか?

はい、大学病院にいたことがあるので、お医者さんとの手紙のやり取りは慣れています。
ガンの治療中なら、化学療法はやっていますか、薬剤は何ですか?いつから治療ですか?放射線治療はどこに当てますか?など聞くと、大体分かるんです。
全体の治療の中のどの辺のステップにいて、「今、歯科治療やっていいな」とか、「今のうちに抜くなら抜かないと後日大変になるな」とか。
それを患者さんに言うと、「そんな質問を歯医者さんにされたことありません」と言われます。

そういえば、スタッフ紹介に口腔がんの論文を英語で書いたとありましたが、なんのこっちゃサッパリ分からないので教えてください。
(「東京医科歯科大学難治疾患研究所 分子細胞遺伝に学内留学し、口腔がんに関
連する新規遺伝子を同定し、国際的学術誌へ掲載。歯学博士取得」)
https://academic.oup.com/carcin/article/34/3/560/2463082?searchresult=1

口腔ガンの話です。
ガンは遺伝子変異で起こる病気です。
ガンを抑制する遺伝子、つまりガンにならないために本来人間が持っている遺伝子があるんです。
ガン抑制遺伝子に変異、つまりトラブルが起こるとガンを抑制できなくなっちゃって、ガンになっちゃう。
そのガンを抑制する「micro RNA-596」は、僕が発見した遺伝子なんです。

ガンを抑制する遺伝子を見つけたんですね!すごい!

micro RNAの数字がいっぱいあって、そのうちの596を見つけたんです。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0062757

もう一つの論文は原園先生が著者で、僕がやった実験の一部のデータを使っている、すると名前がこうやって載ります、共著ですね。
ガン細胞は動いていく・・・その場で大きくなるだけじゃなくて移動する、それを「浸潤(しんじゅん)」と言います、「転移した」とも言います。
ジワジワ広がっていくときに働いているmicro RNAを同定(どうてい:発見した)ですね。

ガンを「抑制する遺伝子」と「転移する遺伝子」を見つけたんですね!しかもどっちも英語・・・先生、子どもに英語を教えてください!(笑)

ありがとうございます。英語の勉強、一緒にしましょうか?(笑)
何はともあれ、病気の治療中、歯の治療はおざなりになりがちです。
でも、病気だからこそお口の環境を整えてあげることが大事なんです。
どんな病気でもたじろがないので、安心して相談してくださいね。

持病がある方の歯科治療外来

「血液サラサラの薬を飲んでいるから、抜歯はできないと言われた」
そのような患者さんも安心してご来院ください。

高血圧、心疾患、糖尿病、腎臓病(透析中)、肝臓病、骨粗鬆症など全身疾患をお持ちの方で、歯科治療に不安がある方、他院で治療を断られた方も、当院では医科と対診(たいしん:医学的なことを確認を取ること)した上で安全に歯科治療を行います。

また、悪性腫瘍(がん)の治療中で、抗がん剤による化学療法、放射線治療を受けている方でも医科に対診を行い、治療の進行状況に応じて、適切な歯科治療を行います。

今では、全身麻酔の手術前に口腔内のクリーニングを行うことで、術後合併症(肺炎など)入院期間短縮などの効果が明らかにされています。そのため、医科からの術前スクリーニング(全身麻酔手術前、化学放射線治療前)なども積極的に受け入れていきます。

例えば、下記などの理由により、歯科医院受診が不安だったり、他院で断られたりして、専門機関や大学病院を紹介されるケースがあります。

  • 複数の薬を内服中のため、薬を出してもらえない
  • 血液サラサラ薬により抜歯出来ない
  • 透析中のため、内服薬の管理が難しい
  • 化学療法により白血球数や血小板数が低下
  • 様々な基礎疾患に対する注意点が不明

このようなケースでも、オアシス歯科では「口腔外科認定医」の院長が全身管理を行いながら、安全に歯科治療を行う事が可能です。必要に応じて内科と対診を取りながら、慎重に進めていきますのでご安心ください。

参考:埼玉県の「口腔外科認定医」の割合

持病がある方の歯科治療外来 よくある質問 Q&A

Q. 受診時、何か持って行った方がいいものはありますか?

A. 過去〜現在までにかかったことがあるご病気をお聞きします。内服薬、治療歴、アレルギーの有無などが分かる資料をご持参下さい。お薬手帳、最近の血液検査データ、糖尿病手帳などですね。「歯医者だから関係ないだろう」と思わずに全部持って来て下さい。

Q. 紹介状はいくらかかりますか?

A. 全て保険の範囲内でご紹介可能です。紹介状のみなら250〜750円(保険負担割合による)です。そこに初診料・再診料・管理料などが加わります。紹介先は、患者さんと相談した上で適切と考えられる専門機関へご紹介致します。